「ご多用の折」の意味を詳しく紹介。使い方の違いを具体例で学ぼう!

ただいま~。今日は参ったよ。案内状の下書きを部長に添削されちゃった。

かな
ふ~ん。何がいけなかったの?
祝い事の案内状だから、「ご多忙」じゃなくて「ご多用」だろう、だってさ。
かな
あら、部長さん、細かいところ気にするんだねぇ。

そうだよなぁ。でも「忌み言葉」だからって。

手紙やはがきを書くときに、気を付けたい用語ってありますよね。

特にビジネスでは、仕事上の相手に失礼のないよう、細心の注意を払います。

でも、意味がほぼ一緒だと、どう使い分ければいいのか分からないことも。

今回は、「ご多用の折」の意味や使い方をご紹介。

意味のよく似た用語との使い分けを、具体例でみてみましょう。

ビジネス文章だけでなく、普段のお手紙にも役立ちますよ。

 

「ご多用の折」の意味は?

「多用」とは、

①やるべき事が多く忙しいこと。多忙 ②多く用いること。

引用:「大辞林 第三版」三省堂 2006年

手紙で使われる場合は、「①やるべき事が多く忙しいこと。多忙」の意味になります。

また、「~の折」は、時節や季節のこと。

手紙では、時候の挨拶などによく使われます。

「早春の折」「初冬の折」「寒さ厳しき折」「残暑厳しき折」

つまり、「ご多用の折」とは、“やるべき事が多くて忙しいとき”という意味になります。

ただし、使われている漢字が「用」なので、忙しさはそれほど強調されません。

ニュアンスとしては、“公私ともに用事がたくさんあるとき”、程度の意味です。

 

似た意味を持つ用語

「ご多用の折」とよく似た意味を持つ用語があります。

それぞれ意味が少しずつ違うので、確かめておきましょう。

「ご多忙の折」

多忙とは、

非常に忙しい・こと(さま)。

引用:「大辞林 第三版」三省堂 2006年

「多用」とほぼ同義語で扱われますが、用いられている漢字が違いますね。

「忙」の漢字が表すように、“非常に忙しい”ことが強調された用語です。

そして「多忙」は忌み言葉とされています。

「忙」は、「心(立心偏)」+「亡」の字に分解できます。

亡くなる”を連想させることから、忌み言葉となっています。

特に、結婚や出産などの慶事では使わないようにしましょう。

また、病気見舞いの手紙などでも避ける方が無難です。

「ご繁忙(はんぼう)の折」

「繁忙」とは、

用事が多くて忙しい・こと(さま)。

引用:「大辞林 第三版」三省堂 2006年

こちらも同じく、ほぼ同義語で扱われる用語です。

けれども「繁」の漢字が表すように、“繁栄”“繁盛”など景気がよいことを連想させます。

ビジネスの場面では、“嬉しい忙しさ”というニュアンスを感じますね。

「ご多用」や「ご多忙」より、改まった場面で使えます。

ただし「ご多忙」と同じく、「忙」の漢字がありますので、忌み言葉になりま

使う時には、慶事は避けるようにしましょう。

へぇ~。同じ“忙しいとき”でも、細かな違いがあるね。
かな
そうでしょう。使う時には気を付けないとね。
じゃあ、どんな文面でつかえばいいのかな?

かな
それが、結構いろいろなパターンがあるのよ。

 

「ご多用の折」の使い方

実際の手紙では、どんな文面で使えるのでしょうか?

順番にみていきましょう。

前文の挨拶に使う時

時候の挨拶に続いて、相手の様子を尋ねる挨拶などに使います。

ビジネス文章の場合には、相手が個人の時に使われます。

例文

その1

「〇〇様にはご多用の折と存じます。」

その2

「皆様におかれましては、ご多用のことと拝察申し上げます。」

この文面の後に、自分の様子を付け加えることもあります。

「おかげさまで、こちらも~~です。」

とつなげて、本文に入ります。

末文の挨拶に使う時

前文とは異なり、本文の後で相手の状況を気遣う挨拶として使います。

例文

その1

「ご多用の折、皆様もお健やかにお過ごしください。」

その2

「ご多用のなか、皆様のご健勝を心からお祈り申し上げます。」

その3

「時節柄、ご多用のところ、ご自愛のほどお祈り申し上げます。」

このように「忙しい」時期なので、体調を崩さないようにという気遣う文章で使います。

この場合、「ご繁忙」の方がふさわしいこともあります。

相手の繁盛を願う気持ちも込められ、より丁寧な言葉になります。

この後に「末筆ながら~」「最後になりましたが~」と文章を付け加える場合もあります。

催し事への出席や仕事の依頼をする時

相手に何か頼みごとや参加をお願いする時にも、よく使われます。

例文 その1

催しや会合への出席をお願いする時

「ご多用の折、恐縮ですが、何とぞご来臨賜りたくお願い申し上げます。」

さらに丁寧にすると、

「ご多用の折、誠に恐縮ですが、ぜひともご来臨の栄を賜りたくお願い申し上げます。」

例文 その2

会合の出欠確認などの返事をお願いする時

「ご多用の折、誠に恐れ入りますが、ご返答をお待ち申し上げております。」

「ご多用の折、大変お手数ですが、左記までご一報頂きたくお願いいたします。」

例文 その3

仕事の依頼や面会の依頼をする時

「ご多用の折、誠に恐縮ですが、ぜひとも〇〇の案件をお願いいたしたく、ご考慮頂ければ幸いです。」

「ご多用のところ、恐れ入りますが、ご都合はいかがでしょうか。」

例文 その4

仕事の依頼をしたが、締め切りを過ぎてしまい、催促する場合

「ご多用の折、こちらの都合を申し上げ恐縮ですが、何とぞご配慮頂きますようお願いいたします。」

さらに強く催促する場合

「ご多用の中、ご依頼しましたことで恐縮ですが、お約束ですので、何卒ご配慮頂きたく、重ねてお願い申し上げます。」

例文その4の場合は、「ご多用」よりも「ご多忙」の方がふさわしい場面もあります。

先に紹介したように、「ご多用」は、用事が多いという状況だけを表現しています。

しかし、「ご多忙」は、用事が多いことで、結果として「忙しくて大変」という心情を表現しています。

相手の忙しさを承知していることをアピールしたうえで、“それでもお願いします”と述べるわけです。

相手の立場を思いやった上での催促であれば、“お互い様”という気持ちで対応できるでしょう。

依頼した会合や仕事などのお礼をする時

お礼なので、本文のすぐ初めに使うようにしましょう。

感謝の気持ちが、より強く伝わります。

例文

その1

「先日はご多用の折、ご来臨いただきありがとうございました。」

その2

「ご多用のところ、わざわざ遠方よりご光臨賜り、誠にありがとうございました。」

その3

「先日は、ご多用のなかご光来賜り、丁重なるご祝辞まで頂きまして、誠にありがとうございました。」

その4

「ご多用の折、丁重におもてなし頂き、誠にありがとうございました。」

すごいね!こんなに使いどころがあるんだね。
かな
でしょう。前文・本文・末文のどこでも使えるんだよ。まぁ内容次第だけどね。




気をつけたい手紙用語の使い方

手紙の作法のなかでは、決まり事に沿って書くことが多いですね。

時候の挨拶に代表されるように、決まった単語を順序良く並べて、出来上がり。

でも、読み直しながら「あれ?」って思うことありませんか?

いくら決まり事があると言っても、手紙を書く状況は、それぞれ違います。

場面に応じた言葉を選ばないと、失礼に当たることもあります。

謙譲語・尊敬語の使い分けをする

謙譲語は、自分の動作・人・物を下位に見立てて、へりくだることで相手を持ち上げ敬う言葉

自分の他に、家族や所属する会社や組織も含まれます。

尊敬語も同じく、相手の動作・人・物を上位に見立てることで、相手を敬う言葉

こちらも同じく、相手の家族や所属する会社・組織も含めます。

同じ言葉を何度も繰り返さない

同じ言葉を繰り返さないようにするには、声に出して読み返すのが一番効果的です。

「ご返答を頂戴いたしたく、お願いいたします。」

「貴社へご報告申し上げたく、お願い申し上げます。」

厳寒の候、……。寒さ厳しい頃ですが、…。」

猛暑の候、……。暑さ厳しい頃ですが、…。」

特に、パソコンなどで打ち込んでいると、繰り返してしまいがちです。

読み返すと、音声として認識することで、間違いに気づきやすくなりますよ。

場面に応じて、忌み言葉を避ける

忌み言葉もうっかりミスが発生しやすい用語です。

代表的なものを挙げてみました。

参考にしてください。

祝い事の時に避けたい言葉

一般的な祝い事の時

滅びる・乱れる・乏しい・破れる・貧しい・いたましい・憂い・嘆き・苦しい

開業・開店など

倒れる・崩れる・つぶれる・枯れる・傾く・閉じる・入らない・壊れる

新築・落成など

燃える・焼ける・火・赤・煙

結婚・婚約など

別れる・離れる・切れる・去る・飽きる・破れる・冷える・帰る・終わる・思い切って・戻る・折り返し・別便にて・浅い・薄い

お見舞いやお悔やみなどの時に避けたい言葉

病気見舞いや災害見舞いなど

倒れる・へこたれる・死ぬ・枯れる・衰える・朽ちる・弱る・まいる

結婚やお悔やみの両方で避けたい言葉

再婚や再度を連想させる用語

いよいよ・またまた・しばしば・ますます・たびたび・重ねて・かえすがえす・くれぐれも・かさねがさね・再び・再度・再三

結婚式で「ますますのご繁栄を…。」

お悔やみで「くれぐれもお力落しのないよう…。」

うっかり使ってしまいそうですが、気をつけたいですね。

今回取り上げた、「ご多用の折」は、忌み言葉ではありません。

結婚式やお見舞いの手紙に使えるので、活用していきましょう。

難しいなぁ~。なんだか頭がこんがらがってきたよ。
かな
そうだね。でもあんまり気にしすぎて、伝えたいことが書けなくても困るよね。

 

文豪に学ぶ手紙の作法

文章のことで困ったら、プロに聞いてみましょう。

文豪”と呼ばれる作家から、手紙の書き方を教えてもらえますよ。

菊池寛「手紙の心得」

  • 思った通りに素直に書け。
  • 余り自分について語るな。
  • 時候の挨拶などは、紋切型になることを避け、自分の感じ、感興を二言三言書いた方が風情がある。
  • 字はくずさぬほうがいい、あまりくずすと相手は読めない。
  • 相手に対する敬語は、くどくなると却っておかしい。
  • 出すべき所へ手紙を出さぬのは、まずい手紙よりずっといけない。
  • 一番よいのは、文章もうまく、誠心のある手紙。次は文章は下手でも誠心の十分あるもの。次が文章はうまいが誠心の疑われる義理だけの手紙。

(「誠心」はまごころのこと)

引用:「手紙・はがき・書き方辞典」中川越著 講談社 2002

なんだか、手紙を書くハードルが低くなった気がしませんか?

自分の気持ちや感じを、素直に真心こめて手紙にするのが一番ということですね。

詳しい解説や、実際に文豪がしたためた手紙を知りたい時は、こんな本がおすすめです。

まとめ

「ご多用の折」の意味や使い方を、具体例と一緒にご紹介しました。

「ご多用の折」の意味

「公私ともに用事が多く、忙しい時」

手紙で使う時
  • 前文で、相手の様子を尋ねる挨拶
  • 相手に頼みごとや催促をする時
  • 相手にお礼を述べる時
  • 末文で、相手の体調を気遣う挨拶
気をつけたい手紙用語

「多忙」が忌み言葉になるので、「多用」と言い換えることができる

日本語って、難しいと思います。

ひらがな、カタカナ、漢字、尊敬語、謙譲語、丁寧語、忌み言葉…。

季節に合わせた書き出しも、相手に合わせた言葉選びも大変。

でも、気持ちがこもった手紙には、読んだ人を元気にする力があります。

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形式にとらわれず、のびのびと書けば、手紙はそれだけで贈り物ですね。

うん!なんだか、うまく書けそうな気がしてきた!
かな
良かった! 頑張ってね。
さっきの例文使って、案内状が完成したよ♪
かな
えっ、あれでいいの?(また部長さんに怒られなきゃいいけど…。)

参考文献:「手紙・はがき・書き方辞典」中川越著 講談社 2002 「ビジネスお礼状・挨拶状文例事典」小学館編 小学館 2004

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